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プーシキン美術館展 旅するフランス風景画 東京都美術館 [お話]

関東に住んでてつくづく良かったと思うのは凄い美術館が向こうからやってくること。映画が1,800円のご時世、プーシキン美術館展の入場料が1,600円だぜ!
珠玉のフランス絵画コレクションで知られるモスクワのプーシキン美術館から、17世紀から20世紀の風景画65点が来日 2018年4月14日(土)~7月8日(日)
Pushkin State Museum.jpg
しかし「モネ26歳。」って何? だっせぇな。

上野到着でお昼ごはん。この日は土曜日。
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中生360円、お通しキャベツ100円。串カツ屋の従業員はベトナムの人。

会場は東京都美術館、トビカン
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ここは『ゴッホとゴーギャン展』2016年10 月~12 月以来
入場待ちはありませんでした
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入場
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そこそこの混み具合。少し待てば絵の正面に立てる。

本展覧会でも語られていますが西洋画での「風景画」って17世紀後半までカテゴリーがなかったそうだ。識字率が低かった時代にキリストの教えを解く絵、スペクタクルとしてのギリシャ神話の場面、あとは権力者のポートレート、お金が無ければその場面を切り取った絵に多人数を書き入れるといったところ。そういえば山水画も縁起物として仙人や霊獣が住んでいるような風景を描くが元なので和洋それほど隔たりはないのかな。

第一部 風景画の展開 クロード・ロランからバルビゾン派まで
エウロペの掠奪
クロード・ロラン 1655年 100×137cm 油彩・カンヴァス
Claude_Lorrain_-_Coast_Scene_with_the_Rape_of_Europa.jpg
[コピーライト] The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
これはギリシャ神話の「全知全能の神であり神々と人の父であるゼウスが牛に化けてフェニキア王の娘エウロパをさらう」という何とも畜生な場面を描いたもの。この絵の背景に風景を重ねたあたりが風景画の発生なのではないかと。ギリシャ神話の時代に3本マストの帆船などないから、ロランがどこかで見た風景なのだろう。
中央の白い牛がゼウス。牛が正面向いていないのは「うまくいったぜウシシ・・」という表情をしているのをロランは意図している(と勝手に思う)。
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エウロペの略奪はルネサンスの巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオの方が有名だがな

山の小屋
ギュスターヴ・クールベ 1874年頃 33×49cm 油彩・カンヴァス
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[コピーライト] The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
ここで写実主義の巨匠?クールベに出会うとは思わなかった。とはいえこの絵は晩年の亡命先のスイスで描かれた作品でパリで活躍していた時と全く画風が違う、私の知ってるクールベじゃない方。パリ・コミューンに加わって勢いでヴァンドーム広場のモニュメントを壊した、それに多額の賠償の判決くらってスイスに逃れたわけだ。山と小屋、、枯れた絵で何とも興味が湧かない。画家から精力奪ってちゃダメな事例だ。プーシキン美術館はどこかの悪い画商に「あのクールベでっせ」と掴まされた気がする、なんせモスクワはパリから遠いから。
私が知ってるのは自画像好きのクールベ(この他にも自画像を描いてる)
Courbet self portrail.jpg
と「世界の起源」 L’Origine du monde ←コレ問題作、女性器描くってド厨二レベルの思考

刈り入れをする人
レオン=オーギュスタン・レルミット 1892年以前 51×63cm 油彩・カンヴァス
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[コピーライト] The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
どこかで見たことがあるこの感じ、そうジャン=フランソワ・ミレーです。前述のバルビゾン派とはミレーがパリ市内を離れ住んだのがパリ近郊のバルビゾン村で、その周辺に画家が滞在や居住し、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いたことから。コロ―やテオドール・ルソーとか。バルビゾン派に影響を受けたのがこの絵を描いたレルミット。レルミットに心酔したのはあのゴッホ。

このころのフランスは激動の90年
1789 フランス革命、バスティーユ牢獄襲撃、ベルサイユのばら
1792 第一共和制、ルイ16世処刑
1804 第一帝政、ナポレオン戴冠
1814 ナポレオン流刑、ブルボン王政復古
1815 ナポレオン復位するも100日でセントヘレナ島流刑、第二次王政復古
1830 七月革命、七月王政
1848 二月革命、第二共和政
1852 第二帝政、ナポレオン三世
1852 パリ大改造
1867 パリ万博、ワインの格付けはここから始まる
1870 フランスvsプロイセン戦争、ナポレオン三世捕虜に
それと1712年蒸気機関、1804年蒸気機関車、1825年蒸気船、いわゆる産業革命が起きている。また1839年銀板写真(ダゲレオタイプ)が発明された。市民によって王政が倒され、古い絵画パトロンが新しい絵画パトロンに代わった。絵画も大きく転換する時代。
レルミットとクールベの写真も探したらあったで
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そんな写真の出現が写実主義を駆逐したが写真では出ない味わい?を求めて印象派が発生した(私説だがな)

第二部 印象派以後の風景画
庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰
ピエール=オーギュスト・ルノワール 1876年 81×65cm 油彩・カンヴァス
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[コピーライト] The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」1876年はオルセー美術館所蔵

草上の昼食
クロード・モネ 1866年 130×181cm 油彩・カンヴァス
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[コピーライト] The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
プーシキン美術館はモネ、ルノワール、シスレー、ピサロら印象派のコレクションが充実している印象。
時代が飛んで、
馬を襲うジャガー
アンリ・ルソー 1910年 90×116cm 油彩・カンヴァス
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[コピーライト] The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
風景画といっても、これはもう想像で描いた風景画。ルソーはジャングルに行ったことがないし、ジャングルに白い馬はいない。ルソーは素朴派って言われるが、素朴派って筆のタッチとか明暗とかアングルじゃなくて「19世紀から20世紀、画家を職業としない者が、正式の教育を受けぬまま、絵画を制作しているケース・・」のこと。えーっ!私が一番嫌いなシロート芸、例えば芸能人が描いた微妙な絵?が何とか展に入選しちゃうやつだ。しかしルソーの幻想的な絵はアウトサイダー・アートの域を越えている。描く想像のジャングルは植物や動物が平面(立体的じゃない影が無い)だが奥行きがある彼独自の世界。
平面に描かれた動物は正面か横向き
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しかしコレ馬か? 馬だとしても食われてる方がジャガーか?

なぜプーシキン美術館展に足を運んだかというと、ロシアに行くこと・・・たぶん無いなーと思ったから。
プーシキン美術館はモスクワにあるヨーロッパ最大の美術館であり、収蔵品の数は約10万点でエルミタージュ美術館(サンクトペテルブルク)に次ぐ世界2位(とwikiに書いてあるがモスクワってヨーロッパ?)。プーシキン美術館1912年5月にロシア皇帝アレクサンドル3世芸術博物館として開設された(ちなみに日露戦争は1904~1905年)。ロシアもフランス同様この時期は激動の時代、少し端折ると1917年レーニンが十月革命でソビエト連邦を成立させる。ソビエト政権はサンクトペテルブルクからモスクワへの遷都にともないエルミタージュ美術館から所蔵品の移転し、それらが現プーシキン美術館収蔵品の中核だそうだ。じゃあ誰のコレクションなの? エルミタージュ・コレクションのはじまりは1764年にエカチェリーナ2世がドイツから美術品を買い取りだそうだ。エルミタージュ・コレクションはロシア革命後は貴族から没収されたコレクションの集積所となった。不思議なのはソビエト共産党が、つまりプロレタリアート闘争の宿敵である王侯やブルジョアの絵画のコレクションに寄与したことだ。オーケストラやバレエも然り。

私がコレいいねと思った絵
パリ環状鉄道の煙
ルイジ・ロワール 1885年 172×196cm 油彩・カンヴァス
'Smoke_on_the_Paris_Circuit_Line_(The_Paris_Suburb)'_by_Luigi_Loir,_1885,_Pushkin_Museum.JPG
[コピーライト] The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.
美術の先生のお手本のような絵。カンヴァスに絵具で絵を描く場合、カンヴァスの布目とペンキの質感をいかに消すか、真逆にどう生かすかだと思います。シロートの美術批評なので言葉足らずで恐縮ですが、例えばフェルトで犬や猫のぬいぐるみを作ったらそれらしいが、フェルトでガンダム作っちゃダメだろう、、そんな感じで非常に上手く描けてる、煙や濡れた路面の質感が伝わってくる。そう!絵画に必要なのは質感! うーんPCのモニタであらためて見るとショボいけど実物はいいよ(もちろん他の絵も)。

プーシキン美術館展ギフトショップ
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図録とトートバック、Tシャツまで買っちゃった
バカ馬と写真が撮れるコーナー
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